2017年12月5日火曜日

類縁種?

 先日、関西に住まわれているSさんからメールをいただいた。
HPに載せている Tricholoma squarrulosum(=Tricholoma atrosquamosum var squarrulosum)について尋ねる内容だった。
HPに載せていたTricholoma squarrulosum

  5年前の2012年8月25日に採集し、その時はクロゲシメジ(Tricholoma atrosquamosum)に近いとは思いつつ何だろうと分からなかった。その後【The genus Tricholoma】(Morten Christensen & Jacob Heilmann-Clausen著 2013)に、「これこれ」とそっくりなきのこを見つけた。よく調べもせず絵合わせで、Tricholoma squarrulosumとHP に掲載してしまった。 
下は図鑑の写真(複写は反則かな?)   
 しかし、その写真の下にある文字に[af T. squarrulosum]とあり、今更ながらなんだけどofと思い込みafを見落としていたことに気が付いた。「af.」または「aff.」はaffinityの略で類縁の意味があり、しばしば属名と種小名の間に入り使われている。afにピリオドは使われておらず、ofなのかafなのかよく分からないけれど、もしかしたら類縁種の紹介を、私が勘違いしてしまったのかもしれない。

「確か…乾燥標本があったはず」と今になって5年前の乾燥標本をやっと検鏡してみた。
ヒダ縁にはおびただしいシスチジアがある 。
 縁シスチジア
 担子器は18.5-29.9μm、基部のクランプは明瞭にある。
 胞子は組織から離れたものを拾い計測
  傘表皮の鱗片
柄の鱗片
 柄シスチジア?
 T.squarrulosumの縁シスチジアは「有るかまたは無い」となっており、あったとしても写真のような紡錘形ではない。胞子サイズも若干小さく、類縁というより、T.squarrulosumとは全く別種のような気もする。なんとか原記載を見つけられないかと探してみたけれど見つけられず、どこが違ってどこが同じなのか分からず仕舞い。そんなわけで、HPからT.squarrulosumは削除した

 Sさんからのメールで調べるキッカケを頂き感謝。ありがとうございました。

2017年10月8日日曜日

Lepista

 今日は、訪ねてきたSさんがコケイロヌメリガサがいっぱい出ていたと言うので、その場所に案内してもらった。10月に入ってもヌメリガサ科の発生が今一つ(特にアカヤマタケ属のきのこは殆ど発生していないに等しいくらい)。行ってみると、確かにコケイロヌメリガサがたくさん発生していた。
  しかし、そこで少し驚いたのは沢山のコブミノカヤタケと思われるキノコが出ていた。

採取し、家に戻り、WEBでLepista inversaを検索し、コブミノカヤタケで良いのか調べた。「えっ?・・・これかも」と見ていた画像の学名を見ると、Lepista flaccida。よく似たきのこがあるものだと、その違いを調べなくっちゃとスイスの菌類図鑑を見た。すると、L. inversaの学名の下に=Clitocybe flaccidaとあった。L. inversaとL. flaccidaは同じきのこ?だろうかとMycoBankを見てみるとL. inversaの今の学名はL. flaccidaとなっていた。

 そういや、ヒイロイヌシメジもよく似ていて、どっちがどっちなのか正直分からなかった。
ヒイロイヌシメジ(Paralepista gilva)をMycoBankでサーチしてみると、これまた今は L. flaccidaとなっていた。そうだったのか・・・と、同じ ってことに少し安心したけど・・・
ヒイロイヌシメジ、コブミノカヤタケ、どっちの和名を使ったら良いのだろう。

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 ところで、何気にWikipediaを見てみると
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%82%B8%E5%B1%9E
コブミノカヤタケLepista flaccidaとなっていた。
それと
「ムラサキシメジ属(Lepista)は、かつては大きなキシメジ属の中に含まれ、現在はカヤタケ属のシノニムであると考えられている廃止予定のキノコの分類である。しかし、カヤタケ属自体が多系統と考えられており、分けられる可能性がある。と書かれていた。

 チョット・・・変、「キシメジ属の中に含まれ」じゃなくて「キシメジ科の中に含まれ」じゃない?

 でも・・・廃止予定って・・・Lepistaという属名が無くなってしまうかもしれない?
分類はどんどん変遷していて、今は混とんとしていて仕方のない時代なのは分かってるけど・・・
う~ん・・・
何となくLepistaという響き好きだったんだけどなぁ・・・・・・と、そんなことを思っていた。

2017年6月30日金曜日

Pluteus sp

 下草がぼうぼうと生い茂った防風林に入るには、かなりの勇気がいる。それが先日、一部の下草が刈られていて、これなら!と入ってみた。もしかしたら、ツバナシヤナギマツタケ(青木仮称)があるかもしれないと思ったのだ。・・・が、なかった。
 あったのはキイロウラベニガサ・ウラベニガサ・スギタケ・コキララタケ・キララタケ・イタチタケ、それとヒメアジロガサモドキと思われるきのこ、アラゲコベニチャワンタケぐらいだった。
 横目でウラベニガサを見て通り過ぎたものの、引き返し、どうしたものか少し考えた。ウラベニガサと思っているけど、本当にウラベニガサなんだろうか・・・本家ウラベニガサは、これだ!ってのを実は知らない。持って帰るべきか迷った。
持ち帰るなら、写真が必要だよね。

 顕微鏡で覗いてみると、側シスチジアがいっぱい
胞子

(6.2)6.6-7.6(9.1)×(4.6)5.1- 5.8(6.8)μm 
胞子を見ただけでは、ウラベニガサなのかどうか分からない
傘表皮の菌糸の先端を見ると

 先端の菌糸が太くなっていない 。ここで、本家のウラベニガサではないことが分かった。
では何だろう?
 スイスの菌類図鑑を見ると、傘表皮菌糸の先端が太くならないものに、
Pluteus brunneoradiatus(カサスジウラベニガサ)とPluteus primusがある。最初P.primusの方ではないかと思ったが、どうも担子器の形態が違っているように見える。
では、カサスジウラベニガサか?
どうも、傘に筋があるようには見えないし・・・
シスチジアの線画を描いてみた。
側シスチジアの方は、規格外と言えるようなものも入っているけど、切片1枚に1個くらい超太が入っている。ウラベニガサの仲間のきのこには普通、超太は入っていないのだろうか、それとも規格外として入れないのだろうか・・・?・・・何だか余計分からなくなってしまった。
 担子器やシスチジアの計測をしていないせいもあるが、胞子サイズにしても、どうも、今一つピンとこないし・・・。まぁ、ウラベニガサ(Pluteus cervinus)ではないということが分かり、おいおい調べてみようと思う。

2017年6月9日金曜日

サケツバタケ

 M公園の一角にウッドチップの散策路がある。昨年、その散策路を歩き、フミズキタケやツバナシフミズキタケが群生しているのにも驚いたが、サケツバタケがあちこちに蹴とばされ転がっていた。
今年はどうだろうか見に行くと、相変わらずあちこちで踏みつけられていた。

きのこ嫌いの仕業だよねぇ 
何もここまでしなくたって・・・まるで敵視してるとしか思えない
 それでも、草むらに生えているのには気付かれず、ひっそりと出ているのもあった。
  
 しばらく歩くと、昨年もサケツバタケなんだろうかと思っていた きのこに出会った。サケツバタケって傘の色は小豆色っぽい色をしているが、これは黄土褐色。 これまで見かけたことのあるキサケツバタケは、もう少し綺麗な黄色をしていてスレンダーな感じだったので、キサケツバタケとするにはどうも違和感がある。
 このきのこを持ち帰り、ちょこっと検鏡してみた。
胞子は水でマウントするとこんな色

 KOHでマウントすると茶褐色に変わる
 スイスの菌類図鑑のStropharia rugosoannulata(サケツバタケ)を見てみると、どうも胞子の形状が若干違い(スイスの菌類図鑑は一回り小振りで少しプックリしている)。サケツバタケとは別種なんだろうかと日本新菌類図鑑を見てみると、サイズ的には範疇に入っている。はてさて、キサケツバタケなんだろうか・・・。

2017年6月7日水曜日

Peziza ?

数日前から腰痛で、遠出はちょっと無理
でも、近場ならと昨日隣町まで出かけてきた。

朽ちたシイタケの榾木 を見てみると、毎度ながらウラベニガサの仲間が顔を出していた。
柄は、黄色味を帯びていて、たぶんキアシベニヒダタケなんだろうと思いつつ
 いつも見かけているキアシベニヒダタケより大きく、もしかしたら別種?持ち帰ってみた。
(写真では柄の黄色味は不明瞭だけど目視では黄色味がある )

胞子、傘表皮、縁シスチジア、側シスチジアを検鏡してみると、やはりキアシベニヒダタケだった。

その他、朽ちた榾木で見かけたのはヒメアジロガサの仲間と思われるきのこ、ウラベニガサ、 ナヤノシロチャワンタケ、イタチタケ、そして、下の子嚢菌。
このきのこは初めて見た
近くに5㎜程度の2~3個の幼菌があり、上の写真の子実体は成菌だろうと思った。帰宅後検鏡してみると、やっと子嚢が出来始めてきたところで、その子嚢の中には全く胞子は出来ていなかった。
 そのまま室内で放置し、今日見てみると子嚢の数も増え、胞子も作られ始めていた。明日になったら胞子は成熟するだろうか・・・。 何となく、Pezizaではないような気がしてメルツァーでマウントしてみると、反応は鈍いもののJ(+)のようだ。
 Pezizaなんだろうか?

もしかしたら、peziza apiculataかもしれない・・・
 http://chawantake.sakura.ne.jp/data/Peziza_apiculata.html
もしそうだったら、フクロシトネタケに似た胞子なので、面白いのだけど・・・
http://www.actaforum.actafungorum.org/viewtopic.php?t=8180 

 明日以降、また見てみようと思う。

-----------6/13 追記----------------



やはり、peziza apiculataのようだ。

2017年5月4日木曜日

コキララダマシ②


先日のCoprinellusの線画を作ってみた。
図版の記載をよく読まず、線画図のみを見て、コキララダマシではないかもしれないと思ってしまった。けれど、よく読むと柄シスチジアのところで「時に先が2~3に分岐するものがある。」と書かれていて、私が見たものは、青木氏が観察したコキララダマシと同種として良いのだと思う。

 今回 Coprinellusをまともに(自分としては)調べたのは初めて。でも、あぁ・・・この種も胞子は長径と短径の他に厚さも計測するんだ・・・と、図版やスイスの菌類図鑑、そしてKees Uljeeさんの記載を見て初めて分かった。
 柄シスチジア以外は Coprinellus xanthothrixと概ね同形で、青木氏は柄のシスチジアの長さの違いからCoprinus spとしたのかな?と、そんなことをふつふつ思わされている。


 下は青木図版のコキララダマシ。




2017年4月29日土曜日

コキララダマシ

 昨日、札幌あたりのサクラの開花宣言がやっと出された。
そろそろ、自分も始動しなくっちゃなぁ・・・と、近くの防風林へ出かけてみた。
目的はコキララダマシ(青木仮称)。
 このきのこは、キララタケやコキララタケに先駆け春一番に出るきのこ。特に珍しいきのこではないが、きちんと記録を作っておきたいと思いながらすでに何年も経っていて、気になっているきのこのひとつ。

コキララタケと似ているが、単生で発生していることが多く、束生してもせいぜい2~3本程度。コキララタケやキララタケと大きく違うのは、縁シスチジアにフラスコ形(あるいはビン形)のシスチジアがある、ということだろうか。
 
青木図版(No1143)によれば、【Coprinus sp】とあるが、もしかしたら【Coprinellus xanthothrix (Romagn.) Vilgalys】ではないのかな?という気がしている。
 断片的な観察では断定することが出来ず 、やはり総合した観察を要するかな・・・。


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追記
柄シスチジアを見て、ちょっと・・・いや・・・かなり・・・ショック!
もしかしたら、コキララダマシと違うかもしれない。 


下はVeil(傘表面の鱗皮) 

下は傘表皮


2017年1月21日土曜日

クロカワの学名

ある資料を作成していて
ふとクロカワの学名の違いに「はて?」と目が留まった。

山渓の新版「日本のきのこ」 2011を見ると学名はBoletopsis leucomelaena Pers.
日本産菌類集覧2010を見てもBoletopsis leucomelaena (Pers.:Fr.) Fayod
ところが
日本産きのこ目録2016で、クロカワは Boletopsis grisea (Peck) Bondartsev & Singer
B. leucomelaenaは、ミヤマクロカワとなっている。

クロカワの学名って、どちらが正しいのだろう?